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クリエイティブコモンズとオープンソース
 (2008年05月19日)
       

著作物関連の新たな動きとして、クリエイティブコモンズが話題となっている。  文書や写真、音楽などの著作物について、このクリエイティブコモンズによりライセンスすることで、従来のような著作権料の支払や著者の許可などに関して、その取扱いの自由度が大きく広がることになる。
 クリエイティブコモンズの定義とは、「表示」「非営利」「改変禁止」「継承」のうち、「表示」は必須で他の3つは適度に組合せて利用できる仕組みである。「改変禁止」と「継承」は相反するため、この両方を一緒には選択できない。
 ただ、「非営利」は必須ではないので、選択していない著作物であれば、営利に利用しても問題ないことになる。
 これらのキーワードは、我々オープンソース業界が長い間携わってきたソフトウェアの著作権問題によく似た内容である。
 オープンソースの場合は、GPL系での「改変」の際の再公開やBSD系の全くの自由化などとなってきて、ビジネス化においてはいろいろな誤解や訴訟などにつながったこともあったが、クリエイティブコモンズは、今のところ分かりやすいスタイルとなっているように思われる。

このところ、デジタル・オーディオ関連の仕事もあり、音楽ビジネス関連の人たちと話していると、「CDが売れなくなってきたからミュージシャンを志す人が減っている。優秀なミュージシャンがでてこない今後の音楽業界は暗い。」という声をよく聞く。始めはなるほどと思ったが、これは大きな間違いであることに気が付いた。
 もともと芸術とは、金のための行為ではないはずだ。自分の考えた独創性を世の中に問うことだ。時として彼らは凡庸な時代の流れに見いだされることがなく、極貧の生活を送りその死後にようやく時代が理解してきて名声を世界に知らしめる例なども多い。
 インターネットの普及が進展すると、世界中の多くの人たちに向けて音楽を発信することができるようになる。レコード会社の人が売れそうなものを選択してCDというパッケージで販売していくよりも個性や独創性は広がるような気がする。世界の音楽ファンが大衆として受入れるのではなく、ロングテールの概念のように、数少ない独創性を理解できる人として判断する方が良いのではないだろうか。
 クリエイティブコモンズは、このような視点にたっているのだと思う。
 インターネットで音楽配信が進み、クリエイティブコモンズによるダウンロードサイトも、今後は更に進展していくことになるだろう。

セルジュ・チェリビダッケという指揮者は、レコードのためのスタジオ録音をしないポリシーを貫いたことで有名である。今年生誕100年ということで盛上がっているヘルベルト・フォン・カラヤンが、次々とレコードというメディアを活用して大成功していったのとは正反対の動きをした指揮者だ。
 チェリビダッケのCDは、ライブ録音のものしかなく、ライブ録音の場合によくある演奏の間違いやコンサートホールでのせき払いなどのノイズがそのまま入っているが、その独特のゆったりとしたテンポから繰り出される音楽からは、人を感動させるものが少なくない。

我々が手掛けているソフトウェアの世界も、もともとは実は芸術の一部なのだと思う。
 創ったプログラムをユーザーに見てもらい、「こんなことができるんだ」と感動してもらうのが嬉しくてやってきた人が多い。最近では、ITのコモディティ化が進んで、電気や水道のようにシステムは普通に動いていて当然で、ダウンや間違いがあったら責められてしまうスタイルになってしまった。これが学生たちからIT業界が人気がなくなった最大の理由なのかもしれない。
 幸いなことに、オープンソースの世界には、まだこのようなソフトウェアの感動が残っており、また新たな輝きを発見できるチャンスがあるので、我々は頑張っているのだ。

millon